先日覚せい剤取締法違反で逮捕された清原和博容疑者について、野村克也氏はテレビ番組で次のように話した。
「彼(当時の西武監督・森祇晶氏)が(清原を)ああいう風に育てちゃった」「わがまま、なすがままにしてしまった」


 清原は1985年にドラフト1位で西武に入団すると、高卒1年目から1軍のレギュラーに定着し打率3割0分4厘、31本塁打、78打点の好成績を残した。

 他の一流選手と比較してみると当時の清原の潜在能力がいかに規格外だったかが分かる。下記はいずれも高卒でプロ入りした選手の1年目の成績。

選手名打席打率本塁打打点
清原和博471.3013178
松井秀喜203.2231127
野村克也11.00000
王貞治222.161725
イチロー99.25305


 高卒1年目ではそもそも規定打席数に到達すること自体が困難であることが分かる。高卒1年目の時点では清原はあのイチローや松井の遥か上をいく別次元の成績を残していた。

 大卒選手ですら1年目から結果を出すのはなかなか難しい。金本知憲(通算2539安打、476本塁打)でも大卒1年目のシーズンはわずか5試合の出場にとどまり、3打数0安打に終わっている。


 下記は各選手の通算成績である。

選手名安打本塁打備考
清原和博2112525
松井秀喜2643507※日米通算
野村克也2901657
王貞治2786868
イチロー4213231※日米通算。NPB:1278安打、MLB:2935安打

 清原は1年目の時点ですでにプロで通用するレベルの打撃を備えていた。しかし高卒ルーキーで3割30本を記録しながら歴代獲得タイトルが最高出塁率(2回)のみというのは少々物足りない。清原がプロ入り以降も順調な成長曲線を描いていればイチローや松井はおろか、王を超える打者に化けていた可能性もあるだけにやはり『育成失敗』という印象は拭えない。一部報道では現役時代から違法薬物を使用していたという話もある。もしそれが本当なら体が商売道具のプロスポーツ選手としては致命的だろう。


  清原は1年目に31本塁打を記録したものの、プロ通算22年間で30本塁打以上のシーズンは7度、40本塁打以上のシーズンは1度もなく5年目に記録した37本塁打が自己最多。規定3割を打ったのはルーキーイヤーを含めてたったの2度しかない。1年目の傑出度からするとやはり通算記録の伸び方は相当失速している。1年目の成績のインパクトや期待の大きさから、野村氏は先述のように評したのかもしれない。  とはいえ、それでも通算525本塁打はNPB歴代5位。王(868本塁打)、野村克也(657本塁打)、門田(567本塁打)、山本浩二(536本塁打)に次ぐ大記録だ。育成失敗と言われながらも清原が日本のプロ野球の歴史に名を残した偉大な選手であることに変わりはない。

 余談になるが、清原の逮捕を受けて堺市長応接室に飾られていたサイン入りグラブが撤去されることになった。応接室には地元の子供たちが見学に訪れるため教育面での配慮から撤去した形だ。

逮捕前から自身の不安定な精神状態をブログで赤裸々に綴っていた清原は逮捕後、留置所で毎晩のように声を上げて泣いているという。かつてのスターは今どん底にいる。

 桑田氏は「人生には代打もリリーフもない」とする一方で「現役時代に多くのホームランを打ってきた男だからこそ、自分の人生でも綺麗な放物線を描く逆転満塁ホームランを打って欲しい。それが今の一番の思い」と話した。


 なお、清原の通算1955三振はNPB歴代最多記録の模様。

(文=編集長 谷川亮太)